TA組織論:組織を診断する視点としての「組織の構造」と「組織の機能」

参考図書:
エリック・バーン博士のTA組織論 リーダーを育てる心理学(安部朋子 2013年、西日本出版社)

ブログ・ライター:宮島真由美
自己紹介

「TA・・・驚くその汎用性!」ブログの中で、
TA組織論って何?と思われたブログ訪問者の皆さんに、
安部先生のTA組織論のご紹介を担当している宮島真由美です。

安部先生の書籍「エリック・バーン博士のTA組織論」について、
私の実例を加えながらTA組織論をお伝えします。

今回は、組織の構造(グループ・ストラクチャー)と
組織の機能(グループ・ダイナミックス)です。

それらを区別することで、組織内の問題点や課題が明瞭になり、
当然、解決法や改善法が見え始めます。

バーン博士のTA組織理論を学んで思うことがあります。
私が関わらせていただいている組織をみると、
地に足がついて存続し続けている組織は、
なるほど、バーン博士が教える構造並びに、機能が明瞭であればあるほど、
その組織の部署それぞれの存在感が際だち、
あらゆる面での生産性を高めていると感じます。

今日は、
構造と、機能の考え方、活用方法について、
お伝えします。

TA組織論: グループと組織の違いとは、

なんらかの目的や目標をもった人が
2人以上集まった集団をグループと呼ぶことにします。
例えば、家族、カルチャー教室やヨガ教室などの集まり、同窓会などです。

そして、
個人数人の集まりでも、それぞれに役割が発生した場合や
複数のグループの集合体でできている会社などを組織と呼ぶことにします。
例えば、人数の多い少ないに関係なく、
お金を扱う人、企画・運営をする人、商品をつくる人など
異なる役割を持つ集合体を組織と呼びます。

組織の重要な目的の1つは『その存続にある』とバーンは述べています。

組織の存続を追求するためにエリック・バーンは、
組織診断を「グループ・ストラクチャー」と「グループ・ダイナミックス」
から考えることができると教えてくれています。

組織に何らかの問題や課題があると考えるときに、
その仕組み(構造)について問題や課題があるのかあるいは、
その働き(機能)について問題や課題があるのかを
明確にするところから始まります。

 

TA組織論:組織の構造(グループストラクチャー)と   組織の機能(グループダイナミックス)とは、

バーンは、グループや組織を構造と機能に分けて
診断する方法を考えました。

 

組織の構造(グループストラクチャー):
… 組織の大枠の仕組みや体系。
一つの組織の中の仕組みがどのようになっているのか、
何があるのか、無いのか、その中身を検証し診断・分析する視点。

組織の構造とは、以下の視点を図式化、理解、分析ができる。
1)組織の事業内容、性格、特徴などが確認できる。
リーダーとメンバーの存在、位置関係、関わり方などをはじめ、それぞれの
職務・職域・職能などを客観視することができる。

2)組織運営上必要なオフィス内のレイアウト、動線等をについて考える。

3)組織に必要な役割、能力/スキル/経験、役職や人数等役割を言語化する。

4)名簿、人事に関するデータ

5)日程、関係者、課題、内容等をふくむ計画表の内容の確認

6)組織にいる人達ひとり一人が、
組織内の「人」の役割や立場をどう判断しているかをみる。

7)組織の地位を階層的に表した組織図・・・公式と非公式とか存在する。

8)組織内での管理者を含むメンバー全員の関係性を見る。

これらを組織の構造を検証するツールとして活用すると、
組織が正常に存続しうるのかどうかが分かる。

例:
それぞれの職場の役割や目標は明確に存在し、共有できているのか?
リーダーをリーダーとして認識しているのか?
スタッフ(従業員)のスキルの把握と活用について適切なのか?
それぞれがその本来の役割を担っているのか?
役職、役割は適切なのか(無駄な役職、役割等は無いのか)?
働く場所の環境が適切(安全性や効率性、働きやす等)配慮されているか?

 

組織の機能(グループダイナミックス):
… 組織内の働き。
一つの組織や集団がどのような動きや働きをしているのか、
それら働きは満足しているのか、支障があるのかを検証し、診断・分析する視点。

組織の機能として、

1)組織外部からの刺激(外圧)と、
内部で存在する刺激(上司vs.部下、同僚間等)を図式化する。

2)人、役割、人数、能力、時間を統合した采配をみる。

3)場所、人、役割、人数、能力、時間等を総合的に考慮する概念。

4)人間関係を図式化して理解する。

5)組織を率いる人・指導者のスキルをみる。

6)場の心理的安全性の環境つくりは配慮できているのか。

7)組織文化(風土、当たり前)の確認をする。

8)コントラクト(関係者それぞれの関わり方の認識度)を確認する。

例:
スタッフ間、上司と部下の関係性はどうなのか?
適切なリーダーが存在し、責務をはたしているのか?
リーダーの定義が存在するのか?
職場を安心・安全の場として共有しているのか?
目標やゴールは共有しているのか?
職場の文化(非言語でのやり方等、制約など)の特徴やスタイルを明文化する。

などをTA組織論のフレームワークで学び、
実際の現場で活用できるようにする。

 

これらは、すべて組織運営にかかわる重要なポイントです。

TA組織論を学び、実際の現場に照らし合わせて考えると、
組織の現状をポジティブな面も、ネガティブな面も
すべてを図式化・言語化したりすることができるので、
複雑な組織の問題も積極的に取り組みやすくなります。

 

 

TA組織論:実際の現場を重ねてみると、

以下は、TA組織論の大枠をまとめてみました。

安部先生の著書:エリック・バーンのTA組織論 リーダーを育てる心理学(2014年、西日本出版社、大阪)の P.14にあるチャートを参考にしています。

グループ・ストラクチャー(組織の構造)
グループ・ストラクチャーは『公的構造』と『私的構造』の2つがあります。
『公的構造』はさらに『組織構造』『個人構造』『権威者ダイヤグラム』に
分けることができます。
組織構造は、既に視覚化されて周知されているものも多く、
一般の人達も見たり知ったりしている情報も多いです。

私的構造を『グループ・イマーゴ』といい、
その場に関係する一人一人の個人的ニーズ、
経験、希望や期待感で作り上げられるイメージをさします。

②グループ・ダイナミックス(組織の機能)
グループ・ダイナミックスは、『グループ・プロセス』『リーダーシップ』
『組織文化』『コントラクト』からなります。

組織全体、各部分の働き、組織に関係する内外部の人達が
関わりあって作り出す固有の役割、ポジション、働き、関りを
視ることができます。

 

以下は、TA組織論を身近に使える学びになると感じていただくために、
私の経験に当てはめてみました。

私は短大卒業後、愛媛県の食品メーカーに就職しました。
本社工場の他に、全国に支店や営業所が10か所以上ありました。
社員数は700人程度。
その会社はご子息に引き継がれ、
創業100年を超えて現在でも存続しています。

総務課に配属が決まり、
給料計算や社会保険の手続き、
社員の福利厚生のサポートなどが主な仕事でした。

この会社には社員名簿がありました。
配属先別に台帳が作られており、台帳の項目には、
役職、氏名、住所、生年月日、入社年月日などが載っていました。
これは、グループ・ストラクチャー(構造)に着目すると、
組織構造(公的構造の中)の人事ダイヤグラム
(名簿ダイヤグラムと役割ダイヤグラムを合わせたもの)に当たります。

組織図もありました。
社長をトップに監査役、常務、総務部、企画室、情報システム部、
製造部、原料部、営業部、本社工場など階層図になっていました。
これは権威者ダイヤグラムと役割ダイヤグラムにあたります。

威厳ある社長を筆頭に、
各部門長が組織のゴールを設定し、
リーダーとしてそれぞれの個性を生かしつつ
対外的にも対内的にも組織としてのパフォーマンスを上げていたので、
成果として会社の業績は右肩上がりでした。
グループ・ダイナミックス(機能)に着目すると、
リーダーシップの理論で分析できそうです。

私が働いていた当時でも既に創業70年を超えていました。
誰かに教えられたわけでも、押し付けられたわけでもありませんでしたが、
社員からは会社の名前を汚してはいけない、
誇りとプライドをもって会社のために働いているのを感じました。
これは、まさしくその会社の組織文化(グループ・ダイナミックス)でした。

組織は生き物です。
永らく見落としがあるまま放っておくと、死んでしまいます。
全てのフレームワークが万全であることは難しいですが、
栄養不良の場所や血管が詰まっている所を早く見つけ、
すぐに栄養補給できるような体制作りや、
不具合を見つけるために定期的な健康診断が必要です。

そのためには
バーンが教えてくれたフレームワークを
絶えずチェックする必要があると感じています。

フレームワークの1つ1つについては、
今後のブログで詳しくご説明しますので楽しみに!

次回は、バウンダリーについてお伝えします。

 

タイトルとURLをコピーしました